昨今、投資というものが万人にとって身近なものとなってきました。投資には、国債、株式投資、外貨預金、仮想通貨や、専門知識や経営ノウハウを必要とする不動産投資など様々な手法があります。中でも少し複雑な感じのする不動産投資は、その仕組みを知る事で、予測されるリスクを最小限にとどめ、自らがコントロールしていくことのできる投資です。初心者でも安定した投資ができるよう、不動産投資の種類や仕組み、メリットやデメリットなど、不動産投資の基本を紹介していきます。

不動産投資とは

不動産投資とは、住居やテナント、駐車場などを貸して賃貸収入を得る方法のことを言います。株式投資や仮想通貨などと大きく違う点は、賃貸借契約を結ぶ相手がいる事です。そのため、経営という観点を考慮しながら進めていく必要があります。そんな不動産投資のメリットとデメリットを見ていきます。

不動産投資のメリット・デメリット

メリットばかりを口にする業者が多いと思いますが、当然のようにデメリットも存在するのです。不動産投資におけるデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。メリット、デメリットといった二面性をしっかり考慮した上で進めていけば、上手なリスクコントロールができるようになります。

*不動産投資のメリット

不動産は株や仮想通貨のように1日にして乱高下するものではなく、数年、数十年という長いスタンスで投資していくものです。不動産投資にはインカムゲインと言われる毎月の賃貸収入や、キャピタルゲインと言われる不動産の売買で得られる売却益があります。しっかりと借り手のつく不動産を所有していれば、長期に渡って年金のような収入が期待できます。また、少ない自己資金をもとに融資を組む事でレバレッジの効いた投資ができるのも大きなメリットです。さらに、現金よりも不動産で相続した方が相続税が低くなるため、相続税対策にもつながります。

エリア情報や入居ニーズなどをつかみ、人気の不動産を所有していれば、家賃設定はオーナー次第なので、収入ですらコントロールする事が可能です。メリットの最大値をオーナー自らが創り出すことができるのです。

*不動産投資のデメリット

不動産投資における一番のリスクは空室です。借り手が付かなければ収入はゼロとなります。また、不動産の取得時には手数料や取得税など様々な費用がかかります。売却時も購入時もかなりの費用が必要となるので、キャピタルゲインとインカムゲインでしっかりと利益が確保できるか計算しなくてはなりません。さらに、不動産は建物価値が減価償却していき、見た目的にも経年劣化していくため、時代に沿うようなリフォームやメンテナンスが必要となり、大きな出費を伴うことになります。

不動産投資における一番のリスクは空室だと言いましたが、それに次いでリスクとなるのが出口戦略と言われる売却の難しさです。急にまとまったお金が必要になったから現金化したいと思っても、すぐに買い手がつくものではありません。買い手がついたとしても、契約完了までには時間を有してしまいます。

このようなデメリットを踏まえて、起こりうるリスクを想定の範囲内に止めることができれば、安定した不動産投資が可能となります。

不動産投資の種類

不動産投資にはいくつかの種類があります。ここでは不動産初心者でも比較的参入しやすいとされるワンルーム、一棟、戸建てといった3つの種類を紹介します。

1棟マンション・アパート経営

マンションとは規模の大きなRC造、アパートとは規模の小さい木造の事を言い、それらを一棟丸ごと所有して家賃収入を得る事を一棟マンション・一棟アパート投資と言います。RC造の場合は数十戸ほどの部屋を所有し、物件価格も億を超えます。木造の場合は6戸〜12戸ほどの部屋を所有し、地方であれば数千万円から購入可能です。

戸建て経営

戸建ての家を賃貸する戸建て投資は、ファミリーやシェアハウスする若者などをターゲットとします。入居者が決まらなければ収入がありませんが、管理費や修繕積立金などを徴収される心配がありません。オーナーが1人なので、自由にリフォームできるため、DIYが得意な人にオススメです。

ワンルーム経営

マンション一室を所有して家賃収入を得る事を区分マンション投資やワンルーム投資と言います。ファミリータイプもありますが、投資物件としては単身者向けのワンルームや1LDKが多くなっています。

それぞれの仕組みと魅力

不動産投資の種類を3つ紹介しましたが、それぞれにメリット・デメリットがあります。それらの特徴を知り、自分に一番適した投資手法を検討しましょう。

大きく稼ぐこともできる不動産投資

一棟投資は多くの家賃収入を期待することのできる投資手法です。

部屋を複数所有しているため空室リスクを分散することができ、複数の家賃収入があるため、他の不動産投資に比べて大きく稼ぐことができます。しかし、建物全体の状態も管理しなければならず、共用部の電気・水道代や、外壁・屋根のメンテナンス費用、受水槽タンクの清掃など、様々な費用がかかります。

小額でできるコツコツ投資

比較的安価で管理も簡単なワンルーム投資は、コツコツ型の投資手法です。

大きなマンションは防火点検やエレベーター点検など様々な費用がかかるため、管理費や修繕積立金が高く、キャッシュフローが少なくなりますが、突然の大きな出費(雨漏りやシロアリ被害など)はないため、コツコツとキャッシュフローを増やしていくことができます。

ランニングコストが低い

戸建て投資は最もランニングコストが低い投資と言えます。

共用部の電気交換や清掃などといった手間がかかりません。入居者と直接契約して家賃を徴収できれば、管理会社にお願いする必要もありません。屋根や外壁などの大規模修繕は念頭に入れておかなければいけませんが、毎月発生するランニングコストは全くかかりません。空室の時に手出しが必要ない(融資返済以外の)というのは、オーナーにとって安心です。

どの投資手法が良いのか

どの投資手法にも一長一短があります。リスクを抑えるために現金購入するのか、融資を借金ではなく資産だと捉えられるのかは人それぞれです。また、資産状況や属性によって受けられる融資の条件が大きく変わります。表面利回りが10%あったとしても融資の金利が3%であれば、利回りは単純に7%となります。金利が1%であれば9%となるのです。また、融資期間が短ければキャッシュフローはわずかしか残りません。それどころか融資金額が多額であればキャッシュフローはマイナスになってしまいます。10年なのか30年なのか50年なのかで、同じ融資額でも年間のキャッシュフローは大きく変わってきます。

融資条件によっては一棟マンションの購入は不可能な場合もあります。まずは、自分のやりたい投資手法と自分にできる投資手法を一致させなければいけません。

不動産で節税できる仕組み

収入から経費などの支出を差し引いた所得に対してかかるのが所得税です。累進課税により所得額に応じた税率分を納税しなければなりません。節税を考える場合、しっかりと経費計上して確定申告上の所得を抑える必要があります。不動産投資で節税するために経費計上できる費用にはどのようなものがあるかみていきます。

確定申告で経費を計上できる

不動産で得た利益から税金を計算する場合、課税される所得を算出する必要があります。その計算式が、

不動産所得金額 = 総収入(1年の内不動産に関わる利益)-必要経費-(青色/白色申告特別控除)

となります。因みに、確定申告には白色申告と青色申告があり、青色申告を選択すると65万円、白色申告でも10万円の控除を受けることができます。

手続きなどを考慮すると、白色申告の方が簡単ですが節税を優先させるのであれば、青色申告の届出を提出した方がよいでしょう。

また、他にも計算式に必要経費とありますが、不動産に掛かる費用なども含まれています。必要経費を適切に計上することで、節税することができます。そこで、必要経費として認められてる費用等をいくつか紹介します。

管理費

区分マンションの場合は建物管理賃貸管理があります。建物管理に関しては選択の余地がありません。そのマンションが加入する管理組合に入り、決められた管理費を払います。

賃貸管理とは、家賃徴収や入居者トラブルの対応、入居者の募集などの業務のことを言います。客付け力の強い管理会社などにオーナーがお願いすることになります。一棟所有の場合は特に管理会社は大切となるので、綿密にコミニュケーションがとれるところを選びましょう。管理費用としては家賃の5%程度が相場です。

修繕積立金

区分マンションの場合は、修繕積立金が決められています。これは年数が経つにつれ上がることが予想されます。一棟所有の場合は、実際に雨漏りの修繕などを行った場合のみ、経費と認められますが、事前の積立金は認められません。

損害保険料

火災保険や地震保険などの保険料は全額経費計上することができます。5年や10年単位で契約し一括払いをしますが、計上できるのは1年分ずつとなります。

租税公課

租税公課とは、国・地方税と公共団体に収める税金です。確定申告では、事業に関わる租税公課によって必要経費として認められる項目があり、不動産所得にかかる一部の項目その対象となります。

例えば、

・登録免許税
・不動産取得税
・固定資産税
・都市計画税
・事業税
・印紙税

などがあります。ただし、不動産投資に関わっている事が前提条件ですので、他の事業などから経費として計上することは認められません。

借入金利子

融資を受けている場合、その利息分のみ経費計上することができます。元利均等、元金均等から返済方法が選びましょう。銀行から来る返済計画書には利息分と元金が分けて掲載されています。

減価償却費

土地に減価償却はありませんが、建物は構造別に決められた法定耐用年数に応じて減価償却していきます。木造22年、鉄骨造34年、RC造47年という歳月をかけて価値が下がっていきます。RC造は耐用年数が長い分、融資も長期間で組むことができますが、減価償却期間も長いため、年間に経費計上できる減価償却費用はかなり少なくなります。

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最終的なキャッシュフローの仕組み

不動産投資におけるキャッシュフローの計算は単純ではありません。表面利回りや事業計画書には実際のキャッシュフローは記載されていません。キャッシュフローを計算するためには、減価償却費と借入金利息、税率などといった個々の情報が必要になります。

減価償却費は、土地を含まない建物の価格を建物種別に決められた法定耐用年数で割って年間の経費として計算します。例えば、建物価格が4,400万円の木造の場合、法定耐用年数は22年なので年間に200万円を経費として計上することができます。(新築と想定)4,700万円のRCであれば、法定耐用年数が47年なので年間に100万円を経費計上することができます。

借入金の利息は借入額や金利によって変わってきます。

個人で不動産投資をする場合は、不動産所得と個人所得(サラリーマン所得や個人事業所得など)を合わせた額によって所得税率が変わってきます。法人の場合は、事業規模によって法人税率が変わってきます。

NOIとは

不動産用語であるNOIとは、Net Operating Incomeの略として用いられ、家賃収入から実際に発生した経費(固定資産税や管理費など)を差し引いた純収益のことを言います。

この際、帳簿上の経費となる減価償却費、支払い利息などは経費に含まれません。

NOI = 年間賃料収入 - 諸経費

確定申告上の利益

不動産所得がある限り、確定申告をする義務があります。家賃や礼金などといった収入から、管理費や固定資産税、減価償却費や借入金の利息分などといった経費を差し引いた所得を申告しなければいけません。減価償却費は実際に支出を伴わない経費となるため、不動産投資においてとても重要です。そのため、減価償却期間が終了すると確定申告上(帳簿上)の収入額が増えるため、それに伴い税金が上がってしまいます。

確定申告上の利益 = NOI – 減価償却費 - 支払利息

確定申告上の所得に対して税金が決まります。

不動産投資におけるキャッシュフロー

最終的に最も気になる手残りと言われるキャッシュフローは以下の式で表すことができます。

キャッシュフロー = NOI - 融資返済額 - 税金

実質的に減価償却費分は、税金がかからない収入とみなすことができます。

この計算で出てくるキャッシュフローはほぼマックス額であることを忘れないようにしましょう。ここから、退去に伴うリフォーム費用が発生したり、年数の経過に伴い家賃が下落したりといったマイナス要因が発生することも考慮しながら事業計画を立てる必要があります。

キャッシュフロー改善策

不動産投資の種類によって発生する費用やリスクが少しずつ違いますが、それぞれに応じてキャッシュフローを計算することは可能です。もちろん、キャッシュフローが多いに越したことはありません。

キャッシュフローを改善するためには、以下のような方法が有効的です。

・家賃を上げて収入を増やす

・経費をうまく計上して税金をおさえる

・頭金を投入して借入金を減らす

・融資金利、修繕費を下げるなど、経費節減に努める

キャッシュフローを増やして現金を手元に置いておけば、いざという時に困らないだけでなく、買い増しをしたい時に融資を受けやすくなるといったメリットがあります。

まとめ

不動産投資にはただの投資としての要素だけでなく、経営の要素が含まれていることがお分かりいただけたと思います。入居が安定すれば、イメージ通りの収入を見込むことができ、長期的に利益を生む投資となります。そのためのリサーチやニーズへの対応といった経営努力が、不動産投資の成功の鍵を握っていることを忘れないようにしましょう。

監修:小林 弘司(不動産コンサルタント)

 

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